辺境ナガランドへ
シャワーを浴び朝食を済ませて朝の町へ出た。まだ9時前だが太陽が煌々と照り付けていてもはや気温は昼間とさほど変わらないほどの暑さだ。
忙しなく駆けまわるトラックやリキシャの間を抜けチケット売り場へ到着。バスを待つ。
しばらくすると思ったより良さそうなバスがこちらへと向かってきた。
これは予想外に快適な旅になりそうだと思ったのも束の間、中へ乗り込むと外の見かけとは裏腹に内装はなかなかに古ぼけたオンボロバスだった。
エアコンはないがシートのリクライニングはそこそこ効くのだけが救いだ。
まぁこれなら何とか大丈夫だろう。
そう思っていたが走り出してすぐにこの旅が過酷なものになることを確信した。
バスは段差に到達するとガタガタガタガタと上下に激しく揺れた。サスペンションが壊れているのだろうか。これはかなり堪える。
今はまだ平地だがこれから山道に突入し夜通しこれに乗ってシロンまで行くことを考えると非常に気が重い。はっきり言って嫌だ。
ナガの山々は険しい
走り始めて1時間半程するとすぐに昼御飯の休憩に入った。
何があるのかわからないので隣の人が食べていたものを指差し注文。
インドに入国してから初めてのカレーだ。
僕は過去、一ヶ月にカレーを40食以上食べた事がある。実際にはまだまだ食べれたが健康を考え泣く泣く40食に抑えた程の無類のカレー好きなのだ。40食も食べておいて今更健康どうのとか気にしてどうするの?という言葉が聞こえて来そうだが丁度その辺りで不調をきたして来たのだ。
僕の中でカレー、ラーメン、寿司はもはや大三元と言ってもいい地位を築いている。真剣な話、健康を無視すればそのローテーションで一生暮らせると思う。
話を戻そう。
そう。昼飯の話だ。
運ばれて来たカレーはインド式に手で食べるのだがスープカレーを食べるのが非常に難しい。米をスープに浸すとすぐにバラけてしまって口に運ぶ頃にはほとんど手に残っておらず僅かに指に付着した米を細々食う事になった。
何かコツがあるのだろうか?
思考錯誤してみたが結局解決方法は見つからずスープカレーはスープとして飲む事にした。
食事が済んだらコヒマを目指し再び山道を行く。
眼下に見える川は相変わらずゴミは多いものの平地と比べるとかなり水が綺麗になって来た。
途中小規模な町で下校中の小学生達が乗り込む車と並んだ。
窓からこちらに猛アピールするヤンチャ坊主。
顔つきは完全にアジア系でここがインドだと言うことを知らなければ日本の小学生と区別がつかない。
カメラに興味津々で「写真撮ってよ!」とポーズを決めたり恥ずかしがって照れ笑いしたり本当にかわいい。
しばし子供達に癒され再出発。
コヒマに向けて徐々に高度が上がって来ているのがわかる。並走している川もゴミがほとんど見当たらなくなって来た。代わりに膝下程の水深の川に車ごと入れて洗車している人が居たけどね(笑
州境が近くなった頃小休憩。
インパールを出発してからまだ5〜6時間しか経っていないのに既に恐ろしく体力を消耗している。
この先、コヒマを経由しディマプールまで到達すれば悪路は終わる筈なのだが一体あと何時間掛かるのか…。
少し付近を歩いて身体をほぐす。
このルートは山中にも関わらず引っ切り無しに車両が通行しているので恐らくマニプール州とナガランド州を繋ぐ大動脈なのだろう。
もう少し道を改善したほうがいいと思う。
まだまだ先が長そうなので売店にてレッドブルと謎の豆を購入。
建屋の裏の崖にはブルーシートで仕切られた簡易トイレがあった。
バスに戻ろうとしたら何やら故障したらしくバスの下に数人が潜りジャッキアップ中。
大丈夫なのコレw
コヒマへ向けて出発
車内で寝ていたらドライバーが戻ってきた。
どうやら修理は終わったらしい。早速コヒマに向けて出発。
この辺りから更に道が酷くなった。
基本的にインパールからここまでは舗装はされているのだが平らではなくデコボコしておりあまり未舗装路を走っているのと変わらない。このバスのショックがイカレているせいもあるかも知れないが昨年末タイのカンチャナブリからミャンマーのダウェイへ抜るため通った南部経済回廊の悪路と然程違いない様な気がする。。。
そんなもんだから今回のバス移動も嘔吐者続出だ。
みんな走行中、窓から顔を乗り出し吐きまくっている。
程なくするとチェックポイントに到着。
特にパスポートチェックなどはなくそのまま通過。
それを過ぎるとナガランド州境らしきゲートが現れた。
州境を越えてから気のせいか少し建物の雰囲気が変わった気がした。
マニプール州とは違う文化を持った人達が暮らしているのだろうか?景色を眺めながらバスは更に奥地を目指す。
コヒマ到着
州境から程なくしてナガランドの州都であるコヒマの街へ入った。
建物は山の斜面に張り付くように立っており、家と家の間には細い通路が張り巡らされている。
バスは17時ごろ中心地へ到達。
夕暮れ時のコヒマはそれはそれは美しかった。今回滞在する事が出来ず非常に残念だ。後髪を引かれつつバスはディマプールに続く道を下り始めた。
交通量は一気に増加し所々狭い道ですれ違う際は片側交互通行だ。
しかしそこは警備員や信号などが存在しない山道なので譲ってばかり居るといつまで経っても前に進めない。そんな状況なのでみんな後先考えず突っ込んで行くものだから当然ながら狭い場所で大型車同士がすれ違えなくなり更に後ろからどんどん車が詰めてきて二進も三進も行かなくなってしまうのだ。
結局どうしようもなくなり周囲の車と協力し、極力道幅が広い場所まで移動、崖に落ちそうな程路肩ギリギリに寄せてクリアした。
所用30分。なんだかドッと疲れた。
その先も変わらず悪路は続いた。
小さなスマホの画面ではこの文章を打つのも難儀する。
もう悪路はこりごりだ!
ディマプールまでもう少し
日が暮れる頃、給油を兼ねてパーキングに停車。
腹は減っているはずなのに何も食べる気が起きない。
この時点で9時間近く移動してきたわけだがまだあと12時間ある事が信じられない。本当に僕のお尻は無事朝を迎えられるのだろうか…。
ナガの山々に夜の帳が下りるとついさっきまで長いバス旅を彩ってくれていた景色ともお別れだ。
これから真っ暗な中このガタガタ道を行くのはさぞ退屈だろうと憂鬱になった。
真っ暗な峠道には車のヘッドライトが山肌に沿うように並んでいる。
結局コヒマから平地へ出るまでの30kmの道程を2時間半かけて下ってきた。
その大部分が道の拡張工事中で未舗装の悪路。かなり悪いタイミングで来てしまったなと思った。
恐らくディマプールからナガランドの州都であるコヒマまでの物流を促進する狙いがあるのだろう。もっと言えばミャンマーとの国境が解放されアジアハイウェイが通行可能になった事による交通量の増加を見込んでの事かもしれない。どちらにせよ近い将来この道は快適に通行出来るようになる筈だ。
そう思うと山を下り切った今、少し寂しい気もしてしまうから可笑しなものだ。
もうすぐディマプールです。